PROJECT
プロジェクトストーリー
エンジニアリングの現場で実際にどんなことが起き、社員がその状況にどのように立ち向かっているのか、リアルな仕事の様子をお伝えします!
01 未来をひらく溶解炉、S-MIC(エスミック)
環境にやさしい、新しい炉をつくろう
以前から溶解に補助的にヒーターを使用することはあったので、大容量ヒーターさえあればオール電化での溶解も可能だろうというのは、技術者であれば自然と出てくる発想でした。しかし当時のヒーターはパワーが小さく、オール電化の実現には程遠いものでした。温室効果ガス削減に注目が高まってきた頃で、三建産業としても新しい市場を開拓する目玉商品を求めていたため、「ヒーターさえあれば…」という話は社内でよく聞きましたが、その時はまだ、誰もが遠い夢だと思っていました。
STAFF
入社5年目の2009年、S-MIC開発における技術部門の担当者に。
転機になったのは、2006年ドイツの展示会でフランスのあるメーカーが開発した40kwの大容量ヒーターに出会ったことです。念願の高出力ヒーターが見つかり、社内でオール電化溶解炉実現への期待が急激に高まりました。 また時を同じくして、本社社屋が広島県中区から安佐南区へと移転し、製造工程を担うグループ会社の工場が敷地内に併設されたことで、開発時にテスト炉製作がしやすい環境が生まれました。
 材料と環境が整ったことで、「それなら、まずはやってみよう」という声があがり、ついにS-MICの開発がスタートしました。社内では「走りながら考える」という言葉で表現されますが、まずはやってみる、やりながらも考える、最後まであきらめない、というのが三建産業のやり方なんです。
何度転んでも
しかし、開発の過程はトライアンドエラーの繰り返しでした。 その中でも最大の問題は、ヒーターの破裂です。 ある日のテスト中、炉から何かが砕けたような音が聞こえました。炉の中を覗き込むと、溶湯内の様子が明らかにおかしい。恐る恐るヒーターを引き上げると、チューブが粉々になったヒーターの残骸が…。 すぐにヒーターを開発したフランスのメーカーに連絡を取ってみましたが原因解明は困難と言われてしまい、私たちは「自分たちでこの問題を解決するしかない」と覚悟を決めました。
まず、ヒーターチューブの耐衝撃性やヒータの素材、構造などについてデータを集め、その情報をもとに考え得る原因についてひたすらアイデアを出し合いました。ヒーターのショートなのか、ヒータチューブに欠陥があったのではないか・・・いくつかの仮説を検証する中で、一人の技術担当者が加熱時にヒーター内部が非常に高圧になることに注目しました。実験によってそれがヒーター素材の性質によるものであるとわかり、ようやくこの問題をクリアすることができました。 初めての取り組みで社内にも業界にも経験者がいない中、手探りで少しずつの開発でした。
これからも、未来につながるものづくりを
2010年5月、試行錯誤の末にS-MIC一号機が納入されました。 しかし、普及にはまだ課題を抱えています。よりたくさんのお客様に使っていただくための設備の大型化やコストダウン、そして火力発電に頼らない電力供給のインフラ整備など。特にインフラ整備に関しては、当社だけの力では解決できないため、お客様やほかのメーカーなどにも協力を呼びかけていかなくてはいけません。 今、環境問題はこれまで以上に注目され、再生可能エネルギーの研究・普及活動も少しずつですが進んでいます。困難は多くても、私たちが目指している方向は間違いなく、この国や世界が進んでいく方向と合致している。そう信じて、これからもS-MICの改良を続けていきます。