ENGLISH
三建産業の強み
ホーム » 三建産業の強み » 開発力 » 開発秘話(アルミ編)
開発秘話
(アルミ編)

開発秘話(アルミ編)

開発秘話インタビュー
若手社員がエンジニアの先輩に聞く

若手社員のチャレンジ精神でオール電化溶解炉を世界初開発

2000年代、原子力ルネサンスと呼ばれる世界的な原子力発電再評価の動きがあり、日本でも電力利用や電力分野の研究開発が盛んになりました。
この時代に弊社が生み出した世界初のイノベーションであり、近年、脱炭素化を考えるお客様からの注目が高まっているオール電化アルミ溶解炉の開発秘話をご紹介します。

登場人物

先輩エンジニア Mさん

2009年入社。営業、設計両方の業務を経験し、お客様から厚い信頼を得ている。最近、設備の脱炭素化を検討されるお客様が増えてきたと感じている。

若手社員 Oさん

2022年入社の若手社員。主にアルミ溶解炉の設計を行っている。技術を磨いて、いつか自分も新技術開発を行いたいと思っている。

オール電化アルミ溶解炉
S-MIC(エスミック)

電気ヒータを利用してアルミの溶解・保持を行う設備。
工場からのCO2排出ゼロ。

若手社員を中心に、2008年に開発スタート

Oさん:

Mさん、今日はよろしくお願いします。

Mさん:

よろしくね。Oさんは技術開発に興味があるんだって?

Oさん:

そうなんです!
最近、S-MIC(エスミック)の引き合いがとても多いなと感じていますが、これは若手社員が力を合わせて世界で初めて開発した設備だと聞いて、私もいつかそんなすごい設備の開発がしたいと思いました。
たしか、ちょうどMさんが入社された頃に開発された設備ですよね。

Mさん:

そうそう。2008年に開発をスタートして、2010年、私がOさんと同じ入社2年目のときに1号機を納入したの。入社5年目の先輩が開発を担当していて、すごいなあと思っていたのをよく覚えてるよ。
Oさんが小中学生の頃、「オール電化」って言葉をよく聞いたでしょ?当時は国の方針もあって電化の大ブームで、工業炉業界でも電気を使った工業炉を作ろう!という機運が高まっていたんだよね。ただ、オール電化溶解炉の開発はどの企業にとってもかなりハードルが高かったみたい。

Oさん:

どうしてですか?

開発中のトラブルを乗り越えて生まれた高出力ヒータ

Mさん:

一番の理由は、アルミの溶解に必要な電気エネルギーがとても大きくて、条件を満たすヒータの開発が難しいからかな。ヒータは、高出力にすればするほど安定性や耐久性が落ちて壊れやすくなってしまうからね。

Oさん:

なるほど、アルミの融点660℃まで昇温するにはものすごいエネルギーが必要ですよね…。
S-MICは東京電力様と共同で開発したんですよね?それに、使われているSAヒータ(Sanken Atherm Heater)は、フランスのATHERM社との共同開発だとか。かなりのビッグプロジェクトですね。

Mさん:

そう!色々な企業の力も借りて、どこの会社も実現できなかったオール電化溶解炉の開発を成し遂げたんだよ。

Oさん:

開発中には、色々と苦労があったんでしょうね。Mさんの印象に残っているお話はありますか?

Mさん:

私が一番驚いたのは、ヒータの破裂かな。テスト中の設備の中から何かが砕けたような大きな音が聞こえて、恐る恐るヒータを引き上げてみたら、チューブが粉々になったヒータの残骸が出てきて驚いたよ。
すぐにATHERM社からチューブの耐衝撃性、ヒータの素材や構造といったデータをもらい、ヒータのショートなのか、ヒータチューブに欠陥があったのではないか・・・と、考え得る原因についてひたすらアイデアを出し合った。最終的には、ヒータ素材の特性上、加熱時にヒータ内部が非常に高圧になり、チューブに負荷がかかっていることが原因だとわかったんだ。

Oさん:

まさに手探りの開発ですね。新技術開発には、チャレンジ精神と諦めない姿勢が大切なんですね…(メモメモ)。

高出力浸漬ヒータ(SAヒータ)

高出力・高効率・コンパクト性のすべてにおいて従来製品を凌駕するオリジナル浸漬ヒータ。保持炉の熱源や溶解炉の溶湯保持、めっき炉の補助熱源等幅広い用途での利用が可能。

過去のノウハウと新技術の融合

Mさん:

それだけじゃないよ。S-MICには、これまでのノウハウを生かした部分もたくさんあるの。

Oさん:

…もしかして、浸漬ヒータを使っているところですか?先日行った工場で、ヒータではなくバーナを使って、同じように浸漬加熱しているメッキ炉を見かけました。

Mさん:

鋭い!よくわかったね。
S-MICは「浸漬」と「循環」という2つの手法で熱効率UPを図っているんだけど、「浸漬」はOさんが見かけた浸漬管式バーナ加熱のセラミックバスメッキ炉(1986年開発)から、「循環」は溶湯循環装置を使って渦を作りアルミ切粉を溶解する大型浸漬型溶解炉(1999年開発)から、それぞれ着想を得ているの。

溶湯を循環させることで効率よく熱を伝える。
(写真:溶湯循環の様子)
溶湯に直接ヒータを浸漬して加熱することで、効率よく熱を伝える。
(写真:発想の元となったメッキ炉の浸漬管バーナ)

Oさん:

S-MICの開発の成功の裏には、若手社員のチャレンジ精神や諦めない気持ちだけでなく、過去に積み上げてきたノウハウがあるんですね。

Mさん:

そう!Oさんも、新技術開発に積極的にチャレンジしようという気持ちは忘れずに、先輩たちが積み上げてきた技術やノウハウもしっかり勉強してね。
最近は特に脱炭素化に取り組むお客様が増えているから、提案チャンスはたくさんあるよ。会社は2020年にATHERM社と資本提携して電気ヒータの改良に力を入れているし、水素・アンモニアなどのカーボンフリー燃料の利用や、熱効率を高める構造上の工夫など、電化以外の観点での提案も求められていると思うな。

Oさん:

わかりました!お客様に喜んでいただける設備を開発できるように頑張ります!